世の中には、日本三大〇〇〇とか、世界三大〇〇〇とかいろいろありますが
「東北三大地主」というのはご存じでしょうか。
山形県酒田の本間家
宮城県石巻の齋藤家
秋田県高梨(現大仙市)の池田家
まあ本間家に関しては東北どころか日本一とも言われていて別格とは思いますが
東北でくくると上記御三家になっているそうです。
文化の日、その池田家が築いた名園、国指定名勝『旧池田氏庭園』に行ってきました。
場所は現大仙市で自宅から1時間足らずなのですが、今回が初めての訪問になります。
実は最初、駐車場の場所を勘違いして、なんと現在の池田家当主の自宅の駐車場にとめてしまいました。
敷地が広くてたくさんの車が駐車済みでしたが、そこはボランティアスタッフの駐車場となっているようでした。
ちなみに豆知識ですが・・・
現当主は16代目ですが、江戸時代から続く名湯・黒湯温泉の経営者でもあります。
温泉の方は経営を引き継いでから3代目のようです。
ということで敬意を表し、以下リンクURLも貼っときます。
それでは正門から庭に入ってみます。
上記は池田家の家紋。
「亀甲桔梗」の紋章です。
そして庭園の敷地は家紋を意識した亀甲型(六角形)で形作られています。
正門を入ると鑑賞ポイントはざっくり以下の3つ。
右奥から左回りに、奥庭(内庭)・北西部(平庭)・主庭園。
まずは奥庭(内庭)に向かいますが、途中に当時の蔵が修復されてます。
こちらは米蔵。
米蔵に保管されている大型ソリで全長7.6m。
クリ材で水に強く氷結しにくくソリ材に適してます。
積雪期を利用して建物の曳家や、庭園の景石・石材の運搬に利用されていたそうです。
こちらは味噌蔵で、ここで味噌と醤油を醸造してたようです。
味噌蔵内に保管された六尺桶。
直径1.8m(6尺)高さ2mで約6トンの味噌を醸造可能。
大正時代、池田家の最盛期の使用人はなんと150人。
それだけの人員をまかなうためには、これだけの米蔵・味噌蔵が必要だったのでしょう。
味噌蔵をすぎると、奥庭に続きます。
奥庭は山里の景を残しながらも開放感があって心地よい空間。
ここは池田家の家族が日常的に利用するための内庭だったそうです。
奥庭から北西部(平庭)に向かいます。
平庭は、庭園内における広場の位置づけ。
園遊会を催したり、テニスや池田家野球チームの練習にも利用されたそうです。
夏の農閑期には使用人大運動会の会場にもなりました。
当時としては珍しい滑り台なども、広場の一角に配されてます。
作庭者の長岡安平は近代日本造園の祖といわれており、庭園内に広場などを設けて社会性を考慮した手法はその特徴の一つといわれてます。
ちなみに「秋田市千秋公園」は長岡安平の名を全国に広めるきっかけとなった氏の代表作です。
最後に主庭園に向かいます。
主庭園は池泉回遊式庭園で、池岸に立つシンボルの洋館がいい感じです。
園路をゆっくり回遊しながら鑑賞します。
国内最大級の雪見灯籠で石材は男鹿石。
高さ・笠の直径約4mで、笠の面積はなんと八畳間に匹敵します。
めちゃくちゃでかいです。
洋館前までやってきました。
秋田県内では初めての鉄筋コンクリート工法建築とのことです。
少し中を覗いてみます。
入ってすぐの閲覧室(図書館)。
当時、青少年のための私設公開図書館として使用されたそうです。
迎賓と社交の場としての定番、玉突室です。
シャンデリアは玉突き台を照らすために低めの設え。
食堂兼音楽室の一角。
蓄音機が味わい深いですが、注目は壁紙です。
洋館内の壁紙は金唐革紙(きんからかわかみ)という紙の芸術品。
和紙の技術を使って革に似た厚みや模様などの風合いを出しており、英国バッキンガム宮殿や国会議事堂でも用いられたものです。
現在制作できる方は国内で数人の技術者のみとのことです。
大仙市の旧池田氏庭園、見事なものでした。
相当数のボランティアスタッフが活動しており、親切な説明もありがたかったです。
今回は1時間程度で駆け足での鑑賞となってしまいました。
長岡安平氏が造りあげた芸術作品。まだまだ奥が深いです。
次回はもう少し時間をかけて鑑賞し、氏の設計思想の神髄に近づいてみたいです。
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