造園科の卒業研究「作庭実習」に挑む ②龍安寺石庭の謎探究編

庭師の訓練

今回ご紹介はNさんの作庭、題して「龍安寺石庭の謎探究編」です。

龍安寺というキーワードは庭の世界のあらゆる処に出てきます。
曰く、室町時代を代表する歴史的庭園、枯山水の代名詞、世界遺産、龍安寺垣、
日本文化の「わび・さび」の象徴、・・・無限に枕詞が出てきます。

そして、こちらはNさんの愛読書。この本によると・・・
龍安寺の石庭は、ただ塀で囲いまれた砂の上に15個の石が置かれただけで
この庭が実のところ美しいのか、美しくないのか、何を意味して造られたのか誰も答えを出していない。
誰が何のためにいつ造ったのかも定かではない。

びっくりです。まさか、そんなことになっているとは知りませんでした。

そして筆者の宮元さんは、いつまでたっても上記謎に答えが出ないことに業を煮やし
従来とは異なる「西洋文化の影響」という角度から謎の解明に挑戦するという壮大な話です。
要約すると、
龍安寺の石庭は、黄金比や遠近法などの手法が見られるが、
そのような幾何学的な手法は西欧の整形式ガーデンに通ずる。
よって作庭にあたっては宣教師などの影響を受けたはずである。

となると、作庭時期も江戸時代であり・・・・と続きます。


前置きが長くなりました。ここからNさんのテーマです。
【テーマ】龍安寺石庭の謎にせまる
【テーマの説明】
この庭は作庭時期、作成者が不明で作成意図も定かではない。
世界的に有名な日本を代表する枯山水庭園ではあるが、
実は西欧手法により作庭されたという推論を考察する。
【施工のポイント】
①石庭の形状が「1:1.618」の黄金比なので縦300mm、横480mmで区画
②左右の油土塀(遮蔽垣で制作)は遠近法を採用し手前から後方へ傾斜させる
③15個の石を5群に分割し、各々を複雑な黄金比分割を用いた石組配置にする

Nさんのねらいは龍安寺石庭の幾何学的手法にのっとってほぼ同等の縮景を
実習場内に再現し、石庭に対峙しその神秘性を体感したいというものです。

Nさんの提示資料です。
平面図と透視図以外に、パソコンで補足資料を準備してきており真剣さが伝わってきます。
  

そして完成。
ちなみに石の周りの砂紋は私がいれました。

方丈から真正面に石庭を眺めます。

「・・・・」
「・・・・」
何も言えません。
なにしろ日本庭園史上最大の謎に対する自分の覚悟を試されているような気がして
畏怖の念を抱いてしまうのです。
確かに美しいとも、美しくないとも、下手なことは言えないです。

まずはこの黄金比の小宇宙に出会う機会を与えてくれたNさんに感謝します。
龍安寺石庭の30㎡の縮景、しかと目に焼き付けました。
いつか必ず京都の龍安寺に行って、このブログの続編を書きたいと思います。

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